矢野顕子はすべての作品が傑作である。
初期の5部作も素敵だし(レーベルはSONY)、坂本龍一と結婚してからのMIDIレーベルの10作品も、どれもが傑作である。
90年代もすぐれた作品を発表し続けた。特に92年の『スーパーフォークソング』は『ピアノが愛した女』という映画にもなった。
私は実際92年の広島公演を見に行き、とても感動した。
ランディ・ニューマンの曲を取り上げたり、ストラヴィンスキーやシューベルトなどのクラシックの歌曲を歌ったアルバムを作った。
どれか1作と言われると選ぶのに苦しむほどである。
その中で、強いて上げるとすればピアノの魅力を堪能するのであれば、『スーパーフォークソング』だと思うし、ロックっぽい代表作と言えば、1986年の『峠の我が家』だと思う。
なおこのアルバムは2013年にリマスター再発版として出され(2枚組)、このアルバムの制作の過程の一端を垣間見ることが出来る。
21世紀になってからは、ますます奔放に音楽活動を続け、本当に天才的としか言えない活動を続けている。
サントラ作品も手掛けていて、『誰がために』は傑作である(主演:浅野忠信)。
2016でデビュー40周年だったが、この年に出たベストアルバムである『矢野山脈』が矢野顕子の入門としては最適かなと思う。
ほかにも、森山良子とコラボったり、ジャズピアニストの上原ひろみとコラボったり、旧知の間柄のTINPANとコラボったり、現代音楽作曲家の武満徹作品を歌ってみたりと、天才としか言いようのない活動をしている。
矢野顕子の世界にズブズブとハマって欲しい。
きっとあなたも彼女の魅力にノックアウトされる。
まあ、でも代表曲と言えば不滅の名曲『ひとつだけ』を挙げる人は多いだろう。私もそう思う。
『また会おね』も『ひとつだけ』と対をなす名曲である。涙してしまうのは私だけだろうか。
こぼれ落ちる情感が素晴らしい。矢野顕子と同世代の人でいうとムーンライダーズの鈴木慶一がいたはちみつぱいの『塀の上で』を思い出す。
あとは、細野晴臣の曲を歌ったものもあふれ出る情感が見事である。例えば『終わりの季節』のカバーとかも出色である。
去年出たばかりのシングル曲の『愛を告げる小鳥』も名曲である。
まあ、矢野顕子についても語りだせばキリがないが、今日はこの辺にしておこう。